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第1章 進路    第3章 職業パイロットへの道
 第4章 SGLab開講予定  第5章 航空行政後進国日本
 第6章 趣味としてのパイロット

第2章 パイロットの実際
第2章では、第1のに各項について詳しく記してゆきます。
ICAO標準資格(PVT,CMR&ATP)と要求項目、 その他の資格(Recreational, 准定期運輸)、 就職する際の最低資格並びに履歴、 Private、Commercial、ATPとR-ATP(Single ATP、Multi ATP) CFI、CFIIによるFlight Time Buildingについて述べます。

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ICAOの標準資格(PVT,CMR&ATP)と要求項目
各国法律により具体的な要求値が設定されていますが、これ以降米国FAA(連邦航空)の基準を主として記してゆきます。

Private Pilot Certificate Eligibility Requirements(資格要件)
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1. Be at least 17 years of age(満17歳以上)
2. Obtain at least third-class FAA Medical certificate(サードクラス身体検査)
3. Be able to read, speak, write and understand the English Language(英語能力)
4. Passed written test and can present your original embossed Airman Knowledge Test Report(筆記テスト)
5. A total of 40 hours of flight time is required(40総飛行時間)
6. Successful complete a practical (flight) test given as a final exam by an FAA inspector or Designated Pilot Examiner (DPE); conducted as specified in the most current version of the FAA's Private Pilot Practical Test Standards (PTS).(認定試験官に於いてFAA PTSを実施し合格する事)

Commercial Pilot Certificate Eligibility Requirements(資格要件)
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1. Be at least 18 years of age(満18歳以上)
2. Hold at least Second-class FAA Medical certificate(セカンドクラス身体検査)
3. Hold an Instrument rating(計器飛行証明)
4. Be able to read, speak, write and understand the English Language(英語能力)
5. Passed written test and can present your original embossed Airman Knowledge Test Report(筆記テスト)
6. A total of 250 hours of flight time is required(250総飛行時間)
7. Successfully complete a practical (flight) test given as a final exam by an FAA inspector or designated pilot examiner and conducted as specified in the FAA's Commercial Pilot Practical Test Standards. (認定試験官に於いてFAA PTSを実施し合格する事)

Airline Transport Pilot Certificate Eligibility Requirements(資格要件)
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1. Be at least 23 years of age(満23歳以上)
2. Hold First-class FAA Medical certificate(ファーストクラス身体検査)
3. Hold an Instrument rating(計器飛行証明)
4. Be able to read, speak, write and understand the English Language(英語能力)
5. Passed written test and can present your original embossed Airman Knowledge Test Report(筆記テスト)
6. A total of 1500 hours of flight time is required(1500総飛行時間)
7. Successfully complete a practical (flight) test given as a final exam by an FAA inspector or designated pilot examiner and conducted as specified in the FAA's Airline Transport Pilot Practical Test Standards. (認定試験官に於いてFAA PTSを実施し合格する事)

以上が各パイロット資格のサマリーとなりますが、ATPについては米軍出身者が21歳以上/750飛行時間に引き下げられる等の大きな変更がありました。
又、単純に1500飛行時間だけでは実際の大手エアライン就職には難しいようで、事実上R-ATPが要件となっているようです。

その他の資格(Recreational, 准定期運輸?)
派生資格として、米国ではRecreational Pilot Certificateがあります。
この資格は、主として航空機を飛す趣味志向の運用を主眼とした資格です。
大きな制限として最大でも出発空港から50NM以内の飛行制限がかかりますが、一方メディカルでは車の運転免許と同条件です。
インストラクターが充実している米国では、インストラクターの権限移譲等で、日本のウルトラ・ライトよりは、ある意味自由度がありそうです。

日本特有の資格として、JAL・ANA・航空大学校ではCMRとATPの中間資格として准定期運輸として副操縦士専任資格があります。
申すまでもありませんが、日本の苦しい状況下で苦肉の策として生まれたポジションと思います。(繰り返しになりますが、日本以外では全く訳に立ちません)
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就職する際の最低資格並びに履歴
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参考にWeb上でのパイロット求人情報を御覧下さい。 Pilot Job
多くのオープン・ポジションはタービン・パイロットのポジションです。
最低条件として、年齢制限、ファースト・クラスMedical、ATP保持者とタービン時間(若しくは特定機体のタイプ・レーティング)が指定されています。
世界的なパイロット市場で役に立つ最低ラインはATP+タービン時間(500時間以上)となる事が実際で、例外はありますが、これ以下の履歴では難しいのではと思われます。 つまり1500飛行時間だけでは実際の就職(エアラインのセカンド・オフィサー職)には簡単に就けません。

それでは、米国でのATP(Ristricted-ATP又はR-ATP)取得者はどうするのか?
Fast-Trackと呼ばれる制度があり、大手エアライン(例えばアメリカン)等では、系列の訓練施設や提携の訓練校があり、早ければATP取得中に入社試験を受け、ATP(R-ATP)取得後、直ちにローカル・リージョナル・ジェット会社(例えばアメリカン・イーグル)に入社し、セカンド・オフィサー(副操縦士)として従事します。 経験を積むことにより、本体のアメリカンに移籍し大型ジェットへの途を進みます。

ここの大型ジェット(B-737等)のセカンド・オフィサーまで来れば、上記のパイロット市場でも十分通用するキャリアを得た事になります。

例えが乱暴過ぎますが強いて言えば、PVTは小学校卒業、CMRで中学校、ATPで高卒、ATP+タービンで、やっとこさ大卒と言った感じです。 日本国内でのCMR資格が如何に世界的に通用しないかを理解して頂けると思います。

Private Pilot Certificateについて aviation
実際のPVT資格取得について、具体的に紹介してゆきます。

合格するには、前著のように身体検査、筆記試験並びに実技試験に合格しなければなりません。
この全ての試験に於いて英語の能力が十分に備わっている事も実践しなければなりません。
フライト・スクールを選定し、入学して訓練を始めると、直ぐに飛行訓練が始まります。
インストラクター同乗環境下で、エンジン始動から始まり、タクシー、離陸、水平飛行位までは初日から行ないます。
個人差はありますが、概ね10時間程でソロ(単独飛行)の許可がインストラクターより出され、パイロットとして雛鳥が初めて大地を離れます。 (無事ファースト・ソロを終え着陸すると、ここで生涯忘れ得ぬセレモニーが開催されるのが通例です)

このソロまでに必要とされるのが、Student Pilot Certificateです。
身体検査(Medical Certificate)を受診する際、最初の身体検査で合わせて発行されます。
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具体的な身体条件基準については、各国(米国であればFAA)の機関で確認して下さい。
ここで、非英語圏Studentに注意ですが、Medical Examinationに於いても英語のチェックが入り、Limitation(制限項目)に引っ掛ると即アウトです。
以前は英語の出来ない日本人がハワイあたりで、チョット怪しい認定医の助けを借りて通していたとの噂もありました。(身体検査で認定医との英語での質疑・応答を英語でする事が最低でも求められる事となります)

めでたく初ソロを終えた後は、ソロでのTouch&GoやCross-Country(150海里以上)を行なう事となります。

インストラクター同乗では、上記クロスカントリーと同時に各種のエア・ワークを訓練し、飛行技量の向上を図ります。

シラバスに従い、各ステージでマスター・インストラクターのステージチェックが入り、技量と知識が規定水準に達している事が確認されてから、次のステージへ進む事となります。

このエア・ワーク訓練と同時に、StudentはFAA Written Testを受験し、合格していなければなりません。

最後に、FAA認定Examinerによる、総合試験が行われます。
書類検査から始まり、Medical & Student Pilot Certificate、Log-Book、Written Test結果をチェックされます。
その後、その場でクロスカントリーの計画策定指示を受けます。
出発地、到着地、エンルートの天候、気象予報、必要燃料、ウエイト&バランス等々、本番の準備を、その場で行ないます。
準備終了後、試験官とブリーフィングを行い、全ての質疑応答に適切に答えなければなりません。
続いて飛行実技試験で、試験官と同乗で離陸し、計画通り目的地へ向けて飛行が開始されます。
途中でロケーションチェック目的の航法技量チェックを行なった後、ダイバーシティや近隣空港への目的地変更と着陸を指示されます。
その後は、ストール&リカバリー、フード着用のInstrument等を行なった後、出発地の空港に戻り着陸して、試験が完了します。
全てを終了し、試験官の総合判断で合否がその場で申し渡され、合格した場合には完全に有効なTemporary Private Pilot Certificateがその場で発行されます。
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このPVTライセンスは、 "License of Learn to Fly"とも呼ばれています。
実際Certificate取得直後は、"何とか訓練に用いた機体で、環境天候が悪くない場合には何とか機体を無事に地上に下ろせる技量を持つ"程度です。
空域制限、天候、季節要素、ATCシステム等学ぶべき事項は山のように残っています。
同じ着陸が出来ない事と同じで、飛行毎に新しい発見があります。
基本はVMC(Visual Metrological Condition)環境下のVFR(Visual Flight Rule)です。
言い換えれば常に地上の指標を目当てに飛ぶわけですから、自然地上風景も楽しめますし、何より興味がある対象を見つけた場合は、基本誰の許可も必要のない自由な飛行が可能です。
最も自由を満喫できる環境と言っても差し支えない経験が出来るのが、このVFRです。 (一般やVFRならではの制限と、最も大事なPilot In Commandを真摯に実行する義務を負うこ事が大前提です)

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Commercial Pilot Certificateについて
CMRではPVTに加えてSecond-Class Medical CertificateとInstrument Ratingが要求されます。
Instrumentについて、多くのPVT保持者が150飛行時間程でトレーニングを受け資格を受けています。 又定期的な技量認定が必須となります。
エアワークでは、スピン・リカバリー等アクロバット的なコントロールがPVTに比較して難度の高い操縦技量と機体高度・速度維持の正確さが要求されます。
PVTと最大の違いは、IMC(Instrument Metrological Condition)での運用と、運用に対する代価を得られることです。
職業として収入を得られる合法資格となります。
ATP取得を視野に入れた飛行時間積算をCFI(Certified Flight Instructor)/CFII(Certified Flight Instructor Instrument)職で行なう為に必須な要件でもあります。
CFI/CFIIについては前記Instrumentと同様に試験を受け認定を受け、定期的な技量認定の必要があります。

ATPとR-ATPについて
近年大幅なFAR(Federal Aviation Regulation) 改定で、以前と比べてアカデミック要件が追加されました。
以前からも、特に大手エアラインに於いては気象学、航空力学等飛行機に直接関わる教育を養成課程で行なって来ましたが、運行関わるCRM(Cockpit Resource Management)等も同時に行なわれていました。
この様な地上座学の教育課程をATP取得時に既に修了し、リージョナル・ジェットに直ちに副操縦士として従事できる環境整備する事が目的と推察されます。
「就職する際の最低資格並びに履歴」項でも説明しましたが、最近では高度にデジタイズされた電子コクピットに対して、従前の単純1500飛行時間では実需要にそぐわない実態が有ったと思われます。
具体的に、FAAは認定した教育機関での指定科目の履修をR-ATPの要件としており、この傾向は世界的に適応が広がると想像されます。 この事により全米に所在する一般的なフライト・スクールでは対応が出来ず、地域のFAA認定大学との提携が必須となります。
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CFI、CFIIによるFlight Time Building
ひとつの型として、米国フロリダにあるEmbry-Riddle Aeronautical University(以下ERAUとし、アリゾナにも分校が所在する)を例にし以下記してゆきます。

ERAUは私立航空大学とされていますが、美術、一般ビジネスを含む一般米国大学と変わるところはありません。 特記すべきは、極めて充実した施設を備えたフライト・オペレーション部門を有する事です。
事実として、調べた限りでは4年間で学費のみ(飛行訓練費用は別途)で約1千万円がかかります。(米国私立大学としては特別に高額と言う訳ではありません)
ご存知の通り、米国では地元(居住所と同じ州内での州立大学は極めて安い学費で進学が出来る為に、あえて私立大学を選ぶのは費用が嵩んでも仕方がないからです)

日本人が入学するに当たっては、この費用(1千万円と飛行訓練費用)と英語の習熟度(初めから英語で新しい事を学ぶ事は多大な努力が要求されます)が現実大きなボトルネックと成ります。

ERAUでは、パイロットコース・シラバスに則って学科(卒業認定単位取得)とフライト・トレーニングを平行して行なわれます。
イメージとして、初年度はPVTとInstrument、次年以降CMR、CFI・CFII取得を専攻科目に沿って単位取得を進めてゆきます。
概ね3年次までに、CMRとCFI・CFIIを取得し、以降は学内生を対象としたInstructorポジションで、飛行時間を積み上げてゆきます。
米国籍者は当然、何の制限もありませんが、非居住者でも学内就労は認められており、外国人でもCFI・CFIIとして飛行時間の積算がハンディキャップ無しに可能です。

条件にも拠りますが、最短1000時間とFAA指定講座単位認定によりR-ATP資格が取得できます。
早い学生では3年程で、R-ATPと大学卒業を得て、リージョナル・ジェット会社へ就職する事となります。(23歳ほどで、コクピット右座席にてプロ・パイロットとして働き始める事になります)
これは、あまりにも理想コースで、実際はR-ATP/卒業を取得した後にもERAUでインストラクター業を続け、就職先を探す事が現実らしいです。
非居住者(外国籍)は、査証の種類にもよりますが、卒業後一年間の臨時就業が米国移民局が認めていますので、その期間を利用して米国内の就職先を探すことは理論的には可能ですが現実的ではありません。
実際、多くの非居住者(外国人卒業生)は母国へ帰り、母国での就労先を探すのが一般的との情報です。

仮に日本人がERAU卒業とR-ATPを取得した場合、ANA/JALが入社試験を受けさせてもらえるかどうかも情報がありません。
米国をはじめ日本国内でも少ないですがコーポレイト・パイロットのポジションがありますが、単純にATPのみでの採用は恐らく難しいと思われます。
例 Steveo Pilot Job

以上で、米国に於けるパイロットシステムについて概ねの知識は得られた事と思います。
次の第3章では、職業パイロットになる為の提言を記してあります。




以下、第3章 プロ・パイロットへの道 へ続く




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