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 第2章 パイロットの実際  第3章 職業パイロットへの道
 第4章 SGLab開講予定  第5章 航空行政後進国日本
 第6章 趣味としてのパイロット

第1章 進路
はじめに
本ホームページは、主に中学生、高校生(そして親御さん)に対して、空を飛ぶ職業としての”パイロット”を将来進路選択肢の”ひとつ”として考えて頂ける一助となる目的で開設しました。(2018年記)
本章では、パイロットという職業(Professional Pilot)、パイロット需要、適性、やる気(COMMITMENT to yourself!)、資格、進路、必須習得科目、日米の比較の情報を記してあります。

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パイロットという職業(Professional Pilot)
職業として捉えたプロ・パイロットは、安定した収入や社会的地位等、昔から医師や弁護士と並ぶ職業として認知されてきました。 基本的には、今の日本に於いては以前と同様ではありますが、世界的にはそれ程特殊な職業ではなくなりつつあります。
とは言いながら、一度取得した資格や経歴は事故や犯罪を犯さない限り基本的終身有効で極めて有利な就職資格となります。 従って若い方々がプロ・パイロットを目指して勉学に励むことには、それの努力に値することに疑問の余地はありません。
注釈として、仮にパイロットを目指してもゴールに到達(プロ・パイロット職に就けなかった場合)できなかった場合も後述します。

パイロット需要(2018年現在)
昨今、話題になっているのが近い将来の世界的プロ・パイロット不足です。
以下に国連の情報としてのAFPの記事をリンクしておきます。AFP ICAO News

現状ライン・パイロットの定年は60~65歳となっていて、自然に退職される方々を補う為に退職者数を勘案したパイロットを養成しなければなりません。 しかしながら近年に於いては、リージョナルジェットと呼ばれる市場が拡大し、それに伴う運用機の増加に従い必要パイロット数必要数を増やさなければなりません。 これが、国連報告書の背景にある現実です。
2018年時点で申し上げれば、ここ当分はパイロット需要は高まり続け、パイロット雇用市場では売り手市場状況が続くと考えられます。 ここで注目ですが、”パイロットと名が付けば就職先があるか?”
答えはNOです。以下に詳しく述べてゆきます。

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資格
ICAO(International Civil Aviation Organization 国際民間航空機関)で制定されている操縦者資格は基本的に3種類になります。
・自家用(Private Pilot Certificate以下PVTと略)
・事業用(Commercial Pilot Certificate以下CMRと略)
・定期運送用(Airline Transport Pilot Certificate以下ATPと略)
上記資格以外にも各国の状況により派生資格が存在しますが、国際的には通用しないと考えたほうが良いと思われます。
以下リンクで参考ですが、実際に採用側がどのような資格・経験のパイロットを募集しているかが分かります。
Pilot Job PCC ASIA
実際の就職に当たって最低限のパイロット資格はATPが殆どです。
更に経験として多くの場合タービン(ジェット)の経験が要求されています。
世界的に見ると、ATPとタービン経験の二つは、実際の就職に於いては不可欠要素である事がお分かりになったと思います。

・Airline Transport Pilot Certificate (ATP)
基本は1500飛行時間が必要で、付随して必要要件があります。
以前より飛行経験だけではなく教育による知識習得の必要性も考えられていましたが、近年R-ATPなる資格がFAA(米連邦航空局)によって策定されました。
具体的には、FAAが認定した教育機関(大学等)で指定した単位を修得する事により、1500飛行時間を短縮し、ATPと同等の業務に就く事が可能となる資格です。
この制度により、いち早く実際のコクピットクルーとして従事できる事となり、タービン経験値を積むことが可能となりました。
今後は高等教育機関での知識習得は必須となる事は間違いありません。

・身体条件としてもFirst-Class Medical Certificateが求められる事が殆どです。
(これについても後述します)

・英語能力がある事 aviation

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適性
パイロットを語るにあたり適性の有無に懸念を示される事は当然と感じます。
結論から申し上げれば、”飛びたい”という興味と資格取得(勉強、訓練)まで道程を完遂する強い意思の有無に尽きます。
飛行適性についても、少し乱暴ですが自動車と同じと考えて頂いても大きな間違いではないと思います。 健康な普通の方で、”飛ぶ”ことが好きな、努力を継続できる強い意志があれば適性はあると考えます。 基本は自動車運転技術と同じ様とは申しても、飛行技術習得には自動車とは違って相応の努力が必要です。

ここで申し上げた”健康な普通の方”については、航空身体基準(Medical Certificate)を満たす必要性があります。
CMR、ATPでは2nd-class又は1st-classを定期的に受診し合格(Pass)しなければなりません。
このような実態から、プロ・パイロットの唯一の適正要求事項は、1st-class Medical合格と現役を通じての身体状況維持と言って過言ではありません。

やる気(COMMITMENT to yourself!)
パイロットになるにあたって、最も重要な要素は強い意志です。
言い換えれば”やる気”です。自分はどうしても”飛びたいんだ!”という強い意志が無ければ続きません。
例えば14歳の中学生が、パイロットを志し、その道を歩み始めても、セカンド・オフィサー(コクピットの右シート)には8年程は最短でもかかります。
その間、モチベーションを高く保つには強い意志が不可欠です。
幸い、早ければ高校卒業から飛び始めるので、それまでの4年間程が文字通りの自分との戦いとなります。
典型的な日本の学生の英語レベルでは、全く役に立ちません。
北米では基本言語が英語ですので、この点で大きなアドバンテージがあります。
新しい知識やATC(Air Traffic Control)を必須共通言語の自国語で出来るので、早ければ16歳でPVTも稀ではありません。
日本に於いては、この現実ギャップを埋める為の期間が高校卒業まで期間となります。 具体的には、どのような環境下であっても、高校卒業までの期間に継続的に英語の修練に励まなければ、パイロットへの道は開けません。

進路
前著から導き出される進路は、最終的にATPを目標する場合、平均的な日本人学生であれば高校卒業まで、使える英語(会話、読み、書き)の最低レベルの習得となります。

一方で、前著以外の進路として、自衛隊航空学生、航空大学校、JAL/ANAに拠る自社養成、並びに一部私立大学の操縦士養成課程等があります。
ここで、自衛隊と自家養成については試験合格が入隊・入社と等価で、シラバスに応じてパイロットを目指し、仮に何らかの理由でスピン・アウトした場合もそれなりの救済がなされると想像します。(具体的な情報例は持ち合わせていません)
他の航空大学校や私立大学コースでの問題点は、コースを終了しても、資格、技量、経験、英語力不足で前著の世界的なパイロット市場の要求に遥かに及びません。 (ATP、タービン時間、身体条件、英語能力の最低4条件を満足しません。)

率直に述べて、私立大学の操縦士コースは最初に選択肢しから落とすべきです。 身体条件以外は全く見込みがないからです。

余談になりますが、過去日本ではパイロット不足が深刻な時期があったそうで、”調布で自家用もっていればラインパイロットになれた”と聞いた事があります。
一方、パイロット余剰時代では、公立の航空大学校が募集人員の三分の二しか合格者を出さなかったとか、卒業しても就職出来なかったと聞いています。
実際の話ですが、あるリクルート・エージェントがパイロット職を斡旋しているのですが、自衛隊出身のパイロットの就職先が見つからない事象がありました。
原因は”英語が出来ない”だそうです。

ここで将来の進路を決めるにあたり、仮に何らかの理由でパイロットの道を諦める、止める決断をした場合、その時点で”何が自分に残っているか?”が重要です。

私立大学操縦士コース卒業で、就職できなかったら?
国内が駄目で海外で出来るのか?
ハッキリ申し上げて、たかが一年位の米国航空留学で、全否定はしませんが、どの程度役に立つ英語が身につくかは甚だ疑問と感じます。
従って、極めて狭い目標(日本国内でプロ・パイロットになる)に向かっての、狭い勉強法は無駄とは申しませんが、リスク管理としてはお粗末です。

ある航空大学校卒業の方で、現在超優良企業に籍を置かれている方の御話を伺う機会がありました。
諸般の理由で航空大学校卒業後、国内では就職先を見つけられず、米国フロリダのERAUに再入学されました。(※ERAU Embry-Riddle Aeronautical University で前著のFAA認定R-ATP教育機関の認定を受けています)
結果的には、そこでも就職先は見つけられなかった事と英語が大変であったと申しておられました。

ここまでで共通している事は、如何に”使える英語を身につける”かがキーとなるようです。
逆説になりますが、英語能力を持ち合わせていれば、世界で通用するビジネス・パーソンーに成り得る事です。
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必須習得科目
R-ATPを取得するには、現在FAA認定教育機関(※ERAU Embry-Riddle Aeronautical University で前著のFAA認定R-ATP教育機関の認定を受けています)等に於いて所定の単位を修得しなければなりません。 将来的には世界中で同様の認定校が出来ると想像されますが、現在では米国内に限られます。
海外の大学に進学する場合は夫々の入試要項を参照して下さい。高校卒業をしてから北米大学への航空留学を視野に入れるのであれば、英語は相当なレベルまで基礎力を上げておかなければなりません。
その他の科目としては数学と基礎物理はしっかりと理解しておく必要があります。

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米国と日本の比較
各項目の詳細は第2章以降に記する事といたしますが、ここでは少し詳しく特に北米での実態をお知らせ致します。

実際米国に於ける航空行政を含む、パイロット環境は世界一進んでいます。
従って、米国で通用するパイロット資格が、そのまま世界に通じます。
一方、我日本での航空行政は発展途上国並に閉鎖的で、各種の規制や環境による理由から米国のそれと比べ大きく遅れて(劣って)います。(詳細は後述します) 准定期運送用操縦士なる資格はその最たる例だと感じます。

だからこそ、初めから日本に於ける操縦技量と知識の習得の選択肢を排除し、世界標準北米規格での進路を考えるべきと強く感ずるところです。

アメリカの飛行機好きな少年・少女はどのようにしてラインパイロットになるか?
ご存知の通り、米国本土は広大でボストンからサンディエゴまで直行便旅客機でも6時間/2000海里(以下NM)以上もあり、全米には5千以上もの公共空港があります。 宇宙、防衛、輸送そして個人趣味と全ての考え得るカテゴリーの物体が空域(Air Space)を管理されて運用されています。 言い換えれば、実生活の直ぐ隣に航空宇宙文化が存在するわけです。

飛行機好きな少年が空を飛びたいと思い、近くの飛行場(管制塔・Control Towerも無い)で、16歳位からトレーニングを始めて、一年程で100時間前後の飛行経験でPVT資格を取得します。
続いて、200時間程になるとCMRと計器飛行証明(Instrument Rating)とCFI/CFII(Certified Flight Instructor / Instrument)を取得します。
PVT資格での直接代価は禁止されていますが、CMR以上では飛行行為に対しての代価(収入)を合法的に得られます。 言い換えれば250飛行時間程までは自腹で飛びますが、それ以降はフライト・インストラクター職を得て、訓練生との飛行時間も自己飛行時間として積算してゆき、1500時間を待ってATP取得となります。
日本や他国と比べると、上記の循環システムが米国では出来上がっている事です。
古い機体であればレンタル費用は、ブロック・レートで$150/時間ですから、250時間で400万円相当で、インストラクター代が80時間($60/時間と仮定して)で5~60万円程で、計500万円程度の予算(投資)で一応は職業パイロットになれるわけです。
日本国内では時間当たり3~4万円の費用がかかりると聞いていますので、4~5百万円の予算では自家用を取るのがせいぜいとなります。 page top

ですから、自然米国以外のパイロット志望者は米国を目指す事となります。
実はここで、非米国居住者以外に対して極めて大きな障害が存在します。

9・11以降、動力付き機体の飛行訓練に対し、米政府は厳しい制限を課していますが、それ以前に外国人(非米国居住者)の就労を認めていません。
米国の現地会社(若しくは組織)が米政府に対し、就労査証の申請援助(米弁護士事務所が行い高額の費用がかかる)行い、就労査証(ビザ)が下りて初めて収入を得る事が可能となります。

つまり、日本人が首尾よくCMR(CFI/CFII)を取得しても、ATPに至る飛行時間は自腹(実費)で積算しなければならず、現実的には不可能です。

この状況は例外措置(在学中学内での就労を認める)を適用しATPを取得しても基本的な状況は変わりません。

つまり、成績優秀で経歴も申し分ない日本人(又は非米国居住者)がR-ATPを取得しても、米国での就職先を見つけるのは皆無ではないものの、かなり厳しいのが現状です。
(近い将来、深刻なパイロット不足状況を勘案して、パイロット職に限り就労条件が緩和される可能性も僅かですがあるかもしれません)
大手米国エアラインであっても、単なるATP保持者に対して数百万円とも言われる就労ビザ取得に補助を出す事は躊躇われるのが現状です。

まとめますと、
・パイロットになる為には米国人に限らず、米国は現状考得る最良の選択である。
しかし、
・ATP取得非米国居住者の米国就労は極めて困難である。

以下、第2章 パイロットの実際 へ続く  




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